テニスの4大大会、ウィンブルドン選手権の車いすの部女子シングルスで、第1シードで世界ランキング1位の上地結衣(31)=三井住友銀行=が12日の決勝に臨んだ。
勝てば初優勝。全4大大会とパラリンピックを制覇する「生涯ゴールデンスラム」を成し遂げることになる。この種目では男女を通じて史上3人目の快挙だ。
偉業まで、あと1勝と迫った11日の準決勝を見ながら私が思い浮かべていたのは、2年前の師走、小春日和のテニスコートでの光景だった。
2023年12月上旬、関西を拠点とする上地は、千葉県柏市の吉田記念テニス研修センター(TTC)のコートにいた。
車いすテニス界のレジェンドで、「生涯ゴールデンスラム」を達成した22年シーズンを最後に引退した国枝慎吾さんの指導を仰ぐためだった。
特に力を入れて取り組んだのがサーブの強化だ。上地のフォームを国枝さんがスマホで撮影し、2人で動画を確認する。時には国枝さんが見本を示した。
師走とは思えない暖かさ。2人とも、半袖姿でサーブの特訓が続いた。
コーチの依頼を受けた国枝さんは、まず上地の宿敵、21年東京パラリンピックの金メダリスト、ディーデ・デフロート(オランダ)との試合を映像でチェックした。
上地が放ったサーブのコース…